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多肉&観葉植物が好きで、約400鉢育てています。
さまざまな失敗をし、植物を枯らしたことは数知れず…。
失敗を通じて得た経験値をブログ(緑の日記)や執筆記事で情報発信し、植物好きをひとりでも増やしたい!
植物を元気に育てる上で、避けては通れないのが「植え替え」です。
しかし多くの人が、「葉がしおれてきたから」「成長が停滞しているから」と、不調のサインがあらわれてから慌てて行うのではないでしょうか。
植え替えは、植物が不調を起こしてからではなく、「健康を維持するため」に行うのが理想的です。
根が元気に成長する空間を作り、栄養豊富な土に交換することで、植物本来の生命力を引き出せます。
秋の植え替えは、冬を見据え、植物に体力をつけることが重要です。
この時期に適切なお世話をすることで、大切な植物の成長をサポートできます。
植え替えの目的とその効果
根詰まりを解消し、鉢の中のスペースを確保する

植物は成長するにつれて、根がどんどん伸びていきます。
鉢の中は限られたスペースなので、やがて根がぎゅうぎゅうになり、鉢の中がいっぱいになってしまいます。
この状態が「根詰まり」です。
根詰まりを起こした植物は、水分や栄養を十分に吸い上げられないため、成長が停滞したり、元気がなくなったりします。
植え替えの際に、古くなった根を切り落としたり、ひと回り大きな鉢に植え替えたりするのは、鉢の中のスペースを確保する目的もあります。
定期的に植え替えることで、鉢の中にスペースが生まれ、水分や栄養分を効率よく吸収できるようになるのです。
一般的に、2〜3年に一度のペースが植え替えの適期です。
土の栄養を補給し、成長をサポート
植物が元気に成長するためには、土の中の栄養分が必要不可欠。
鉢植えの場合、固形肥料(元肥)入りの培養土を使用しても、その効果は時間とともに薄れていきます。
効果が長く続くタイプの固形肥料でも、およそ1〜2年で、効き目がなくなるのが一般的です。
植え替えの際に、十分な固形肥料が含まれた培養土に交換することで、植物の成長に必要な栄養分が補給できます。
液体肥料をこまめに与える方法もありますが、手間をかけずに効率よく育てたいなら、土に固形肥料を混ぜる方法がおすすめです。
水はけや風通しを向上させ、快適な環境をつくる
植物を育てていると、水やりや雨によって土の粒が少しずつ崩れ、細かい「微塵(みじん)」になっていきます。
微塵が増えると、土の間にあった隙間がなくなり、水はけや風通しが悪くなってしまいます。
水はけや風通しの劣化は、免疫力が低下したり、根が腐りやすくなったりと、植物によい環境を与えません。
植え替えで新しい培養土にすることで、水はけと風通しがよい状態に戻ります。
硬質タイプの用土を使用することで、微塵を発生しにくくできますが、それでも土は劣化するため、定期的な植え替えは必要です。
病気や害虫のリスクを減らす
土の中には、害虫が潜んでいたり、その卵が産みつけられていたりすることがあります。
そのままの状態にしておくと、植物が病気になったり、害虫によって株が弱る原因にも…。
定期的に培養土を更新することで、土の中に潜む害虫や、その卵を取り除くことができます。
植え替えは、病気や害虫による被害のリスクを減らし、植物を元気な状態に保ちやすくなるのです。
秋に植え替えることのメリット
植え替えを適切に行うことで、植物の生育に恩恵をもたらします。
特に、秋は多くの植物にとって、植え替えるのに理想的なタイミングです。
その理由を、詳しく見ていきましょう。
根への負担が少ない
多くの植物が快適に感じる温度は、15~25℃ほどです。
秋は植物にとっての適温が長くつづくため、根が新しい土に馴染みやすくなり、傷んだ根もすぐに再生しようとします。
冬越しに向けて、株を元気な状態に整えられる
冬は気温が低いだけでなく、日照時間も短いため、植物にとって悪条件が重なる季節です。
植物の調子がよいと、根腐れや葉焼けを起こしにくく、病害虫による被害も受けにくくなります。
冬越しを成功させるために、秋に適切な植え替えを行い、株の調子を上げることが重要です。
春の園芸作業を楽にできる
たくさんの植物を育てていると、春は植え替え以外にもやることがたくさんあります。
- タネまき
- 株分け
- 剪定 など
秋のうちにできる園芸作業を行っておくことで、春の園芸作業の負担を減らせます。
植え替え適期を迎えている植物のサイン
植物は2~3年を目途に、植え替えた方がよいです。
年数は一つの目安になりますが、植え替え適期を迎えた植物が発するサインがあります。
そのようなサインを見逃さないことも、植え替えによる失敗を減らせるポイントです。
具体的には、植え替えの適期に以下のような症状があらわれます。
- 鉢底から根が出ている
- 鉢底の穴やスリットから、植物の根がはみ出している場合は、鉢の中が窮屈になっているサイン
- 水が鉢に染み込まなくなったとき
- 水やりをしても鉢の表面に溜まった水が、なかなか染み込まない場合は、根詰まりの可能性が高い
- 土が早く乾きすぎるとき
- 水やりをしてもすぐに土が乾く場合は、根の成長にともない、土の量が減っている疑いがある
- 葉が小さくなったとき
- 以前よりも小さい葉が展開すると、根詰まりを起こし、栄養や水分を十分に吸収できていないことが考えられる
- 成長が停滞している
- 枝葉が成長する速度が遅くなっている場合も、根詰まりが原因の場合がある
- 葉が黄色く変色している
- 下葉から黄色く変色する場合、肥料が不足していたり根詰まりを起こしていたりする
根詰まりを起こした植物は、いくつかのサインが見られます。
上記の変化を見逃さないように、日々の観察をつづけることも重要です。
植え替えを成功させるポイント
育成環境が整った室内やビニールハウスで育てられるなら、季節を問わず植え替えられますが、秋は冬を見据えた対応が必要です。
ここでは、屋外で植物を育てることを前提にしたポイントについて触れていきます。
植え替える前に植物の調子を整える
株の調子が悪いときに植え替えると、ストレスでさらに状態が悪化し、最悪の場合枯れてしまうこともあります。
- 葉が萎れている
- 水切れでぐったりしている
- 落葉が止まらない など
まずは水やりをしたり、液体肥料を与えたりすることで、植物が元気な状態に戻るのを待ちましょう。
秋は植物の調子を整えることに専念し、春の植え替えを検討してもよいかもしれません。
植え替える前に土を乾かす
植え替えの2〜3日前から水やりを控えて、土を乾かしておきましょう。
土が湿った状態で植え替えると、土が根にまとわりつき、根が切れやすくなります。
土が乾いている状態だと、根鉢が崩れやすくなり、根へのダメージを最小限に抑えることができます。
ただし乾きにくい土を使っている場合は、2〜3日では乾かないこともあるため、雨ざらしの環境を避け、風通しのよい場所で管理すること必要です。
土の表面だけでなく、中の方までしっかりと乾いているか、指で触って確認しましょう。
植え替えは早めに、午前中に済ませる
秋の植え替えは適期を逃さないように、早めに行動するのがポイントです。
地域やその年によって異なりますが、植え替えに適切なタイミングは、残暑が落ち着きはじめる9月〜10月上旬です。
この時期は日差しも柔らかくなり、植物への負担が少なくなります。
近年は残暑が落ち着いたと思ったら、一気に気温が下がる年もあり、秋の成長期は短いです。
厳しい寒さが到来する前に新しい根をしっかり張らせ、冬越しできる体力を作るためにも、早めに植え替えを済ませましょう。
秋の植え替えは、気温がまだ低い午前中に行うのがおすすめです。
午後の気温が高い時間帯に作業すると、植物がダメージを受けやすくなります。
根はできるだけ崩さない「鉢増し」も選択肢に
秋の植え替えでは、「冬を元気に越すこと」を第一に考えましょう。
冬を迎える前に体力をつけることが大切なので、必要以上に根を切り落とすのは避けた方がよいです。
「鉢増し」とは、根鉢を崩さずに、ひと回り大きな鉢に植え替える方法です。
根への負担が少ないので、植物へのストレスを最小限に抑えられます。
秋の植え替えは、鉢増しを積極的に取り入れてみてください。
水はけのよい土を選ぶ
冬は気温が下がるだけではなく、植物の活動も鈍るため、土が乾きにくくなります。
保水性が高すぎる土だと、冬の間に土がずっと湿った状態になり、根腐れのリスクを高めてしまいます。
冬越しに失敗したくない場合は、水はけのよい培養土を選びましょう。
赤玉土や鹿沼土、ひゅうが土などを混ぜることも、培養土の水はけをよくする上で有効な対策です。
植え替え後のケア
肥料はすぐに与えない
植え替え直後の植物は、根がダメージを受け、鉢の中の環境も変わっているため、デリケートな状態になっています。
肥料は植え替え後、1〜2週間経ってから与え始めましょう。
根が新しい土に落ち着いてから肥料を与えることで、根の成長を促し、丈夫な株になります。
気温が下がってきたら、肥料を減らし、冬は肥料を控えるのもポイントです。
秋は冬に向け、根をしっかり張らせたいので、根の成長を助ける「カリ」の成分が多い肥料がおすすめです。
1週間は半日陰で管理する
植え替え後の植物は、まだ新しい土に慣れておらず、水をうまく吸い上げられません。
植物は葉から水分を蒸発させ(これを「蒸散」と言います。)、体温を調節しています。
直射日光に当てると、葉の温度が上がるため、蒸散に必要な水分量が増えます。
しかし植え替え直後は、根が水を十分に吸い上げられないため、水不足で「葉焼け」を起こすリスクを高めることに…。
植え替え後1週間は、直射日光が当たらない明るい日陰や、午前中だけ日が当たるような半日陰で管理しましょう。
気温が急に下がる日は、室内に移動させる
「秋」といっても、急に気温が下がったり、逆に上がったりすることがあります。
植え替え直後は、植物が弱っているため、気温が大きく下がる日は、一時的に室内に移動させるなどして、寒さから守ってあげましょう。
逆に気温が高くなる日は、強い光を避けることもポイントです。
まとめ
冬の厳しい寒さを乗り越えるには、秋の植え替えがカギを握ります。
根詰まりを解消し、栄養豊富な土に替えることで、植物は冬に備えてしっかりと体力をつけることができます。
秋の植え替えは、春の園芸作業を前倒しできるメリットも!
しかし植え替え後は、植物がデリケートな状態になっています。
すぐに肥料を与えず半日陰で管理し、急な冷え込みには室内へ移動させるなど、育成環境や環境の変化に対応することもポイントです。
秋の植え替えを適切に行うことで、大切な植物の成長をサポートできます。
品種ごとの植え替えの方法については、「seed stock MAGAZINE」でご紹介しているので、別記事もあわせてチェックしてみてください!