SEED STOCK MAGAZINE

失敗しない『冬の種まき』!水やりや温度管理などの注意点を解説

観葉植物や多肉植物の種のまきどきは、一般的に暖かい季節(春か秋)です。
ただし「寒い冬でも、種から植物を育ててみたい!」と考える方もいるでしょう。

冬は温度が低く日照が不足しがちなため、植物にとって悪条件が重なる季節です!

ただし「植物が元気に育つ環境を人工的につくる」ことができれば、冬でも種まきを楽しめます。

冬の種まきで特に重要なのは、適温を保つ『温度(水温)管理』と、水を切らさない『水やり管理』です。

この記事では、冬の種まきを成功させるための注意点を深掘りしています。
種から植物を育てる「実生(みしょう)」を、冬でも存分に楽しみたい方は、ぜひ参考にしてみてください!

冬の種まきがカンタンではない理由

冬の種まきがカンタンではない理由は、以下のような環境になりやすいためです。

  • 低温で発芽を促せない
  • 日照不足により、植物が徒長(葉や茎が間延びすること)しやすい
  • 風通しが悪いことでも、徒長しやすい

また、加温設備を用いた環境では用土が乾燥しやすく、水やりの管理が難しくなる面もあります。

自然の力に任せるのではなく、「植物が発芽し、元気に育つ環境を人工的につくる」ことが冬の種まきには欠かせません。

冬の種まきに適した生育型&品種

植物は夏型、冬型、春秋型に分類される

植物は大きく分けると、以下の生育型に分類されます。

  • 夏型:暑い季節に旺盛に成長する
  • 冬型:寒い(すずしい)季節に活発な成長を見せる
  • 春秋型:春と秋の暖かい季節にグングン成長する

それぞれの生育型にとって適切な環境を準備することが、種まきにも望まれます。

冬の種まきには「冬型」の品種が適している

最低気温がひと桁に差しかかるなど、本格的な寒さが到来すると、植物の発芽率は大幅に下がります。
ただし「冬型」の品種であれば、比較的寒い季節でも種まきが成功しやすいです。
冬におすすめの品種については、こちらの記事で解説します。

ただし室内や温室内の環境で、暖かい温度や光量などを整えることができれば、夏型や春秋型の植物の種まきも可能です!

種まきの方法

植物の種まきをするために理想的な環境は、季節に左右されることはありません。
種をまく際は、以下の手順を踏むことで、植物の発芽を促せます。

  • 種と用土を消毒する
  • 種をまく
  • 水やりをする(湿った状態をキープする)
  • 適温を保ち、光と風を当てる

冬の種まきは『温度(水温)』の管理が重要ポイント

温度管理

冬に植物の発芽を促し、その後の生育を楽しむためのポイントとして『温度管理』は外せません。

発芽に必要な温度(目安)

植物が発芽するためには、以下のように一定の温度が必要です。

発芽の適温

  • 夏型:適温:20℃~25℃
  • 冬型:適温:15℃~20℃
  • 春秋型:適温:15℃~25℃

冬は一部の温暖な地域を除き、温度が低すぎるため、人工的に加温する必要があります。
ただし、逆に暑すぎても発芽率が下がるため、適温に保つことがポイントです!

暖房を使う場合の注意点

加温するために、エアコンなどの暖房器具を使う場合には、乾燥に注意。
特に風が直接当たると、乾燥し過ぎて発芽を促せないことがあります。
エアコンを使用する場合は、植物に風が直接当たらないようにしましょう。

温度を高めるアイテム

以下のようなガーデニング用品を使えば、一年中植物の実生を楽しみやすくなります。

  • 園芸用ヒートマット
  • 温室用のヒーター

室内全体を暖めるエアコンなどに比べると、上記の用品は部分的に加温できるため、電気代を抑えられる傾向があります。
その他ヒーターマットの下に段ボールを敷くなど、保温力を高める方法もありますが、特にガーデニング用品以外を使用する場合は、火事などの事故につながらないように注意してください。

ちなみに筆者宅では室内に設置しているガーデンラックの加温対策として、テーブルクロスとアルミ製の保温シートを被せています。
どちらも100円ショップで購入できるため、節約しながら加温効果を高めたい場合におすすめです!

水温管理

冬は空気が冷たいだけでなく、水道水の温度も下がっています。
種や発芽したばかりの植物はデリケートなため、水道水をそのまま使うと、思わぬダメージにつながってしまう原因にも…。

水道水を半日~一日ほど暖かい室内に置いておくことだけでも、水温を上げられます。
すでに植物が水切れを起こし、早めの対応が望まれる場合を除き、少しでも水温を高められるように工夫しましょう。

『水&湿度』の管理も発芽率を左右する

水を切らさない(乾燥させない)

種まき直後の水やりは、発芽率を左右するポイントのひとつ。

通常、冬は土が乾きにくくなっているため、水やりを控えるのが植物育成のセオリーです。
ですが加温したり風通しがよかったりする環境では、想像以上の速度で土が乾くため、植物が水切れを起こしてしまうリスクもあります。

特に発芽してから最初に展開する子葉(しよう)が展開するまでは、「乾燥させない」ことが重要です。
いちど発芽スイッチが入った後に乾燥させてしまうと、その種はもう発芽しないと言われています。

体内に多くの水分を蓄えている多肉植物は、乾燥気味にするのが本来の育て方ですが、発芽段階では乾かし気味にする必要はありません。

底面給水がおすすめ

特に小さな種は、上から水やりをすると、水と一緒に種が土の奥に流れていってしまうことも…。
園芸用のトレーなどに水を張り、鉢底から吸わせる「底面給水」なら、土を湿らせた状態に保ち、事故のリスクを減らすことができます。

ラップをかけると湿度を上げられる

ラップで鉢を密封すると、湿度を高く保つことができ、植物の発芽を促せます。

ただし密封状態が続くと、カビや葉や茎が間延びする「徒長(とちょう)」のリスクも高まるため、ラップを使用する場合でも発芽後には取り外しましょう。

フタ付きの種まきポットも市販されているため、冬に種をまく機会が多い場合はチェックしてみてください。

季節を問わず気を付けたい注意点&ポイント

保水性や通気性に優れた用土がおすすめ

発芽したばかりの植物は水切れに弱いため、保水性が高く、乾きにくい用土がおすすめ。
また根がスムーズに土に潜り、元気に生育していくために、通気性に優れているものがよいでしょう。

種まきに適した用土

  • 無菌の用土(赤玉土細粒(または小粒)、バーミキュライトなど)
  • 種まき専用の用土

ただし種まき専用の用土は「発芽させること」に特化しており、その後の育成には向いていないため、発芽後には早めに植え替えることが望まれます。

コケ対策も忘れずに

冬は室内で種をまくケースが多いでしょう。
室内はコケが発生しやすいため、コケが発生しにくい用土を使用することもポイントです。

コケが発生しにくい用土

  • 有機物が配合されていない用土
  • 無機質の用土でも鹿沼土はコケが発生しやすいため、最小限の使用に留める

日照を確保する

冬は日照時間が短いだけでなく、太陽光の光量も弱いため、日照不足により植物が徒長しやすい季節です。
できるだけ多くの光量を、意識的に確保するようにしましょう。

好光性種子と嫌光性種子の存在

植物は、発芽時に光を必要とするかどうかによって、次の2種類に分類できます。

  • 好光性種子:発芽するために光を必要とする
  • 嫌光性種子:暗い環境で発芽する(発芽に光が必要ない)

好光性種子には柔らかい光を当て、嫌光性種子は土を軽く被せ、発芽を待ちましょう。

太陽光を有効活用する

冬は太陽光が室内に差しこみやすくなるため、室内でも太陽光を有効活用しやすい季節です。
ただし窓の近くは夜間に冷えこむため、温度管理の面で要注意。
昼だけ窓辺に移動する方法もありますが、毎日の作業が増えるのはデメリットに感じるかもしれません。

植物育成用のLEDライトを併用する

植物育成用のLEDライトは、種まきだけではなく、冬の園芸の幅を広げるために役立つグッズです。
徒長のリスクを回避するためにも、LEDライトがあれば、なにかと安心です。

適度に風通しをよくする

風通しのよさは、植物にとって必要不可欠。
周囲の空気を循環させることで、成長を促せるだけでなく病害虫の予防にもなるため、サーキュレーターを使って風通しをよくしましょう。

植物が発芽した後の注意点&ポイント

「冬にまいた種が発芽した!」と思っても、発芽したばかりの植物が調子を崩すことはめずらしくありません。
特に発芽後一年くらいは、以下のような環境を維持することが重要です。

  • 暖かい温度をキープする
  • 風通しを確保し、カビ防止
  • 少しずつ光量を増やす(強い光を好む品種の場合)

暖かい温度をキープする

発芽したからと言って、植物を冷気にさらしてしまうと、思うような成長を見せてくれません。
気温が安定するまでは、種が発芽した温度をキープしましょう。

風通しを確保し、カビ防止

風通しの確保も、忘れずに続けたいポイントです。
カビが発生しやすい品種の場合、発芽後も1~2か月ほど、園芸用の殺菌剤を使用してもよいでしょう。
この時期にカビが発生すると、高い確率で枯れてしまうため、育成環境を清潔に保つことがポイントです。

少しずつ光量を増やす(強い光を好む植物の場合)

多肉植物は強い光を好む品種が多いです。
柔らかい光の環境で種まきをしていた場合、株の様子を見ながら、光量を強くしましょう。
一気に光量を強くすると、葉焼けを起こし、枯れてしまうリスクがあるため徐々に変化させることが重要です。

まとめ

今回の記事では、一般的に種のまきどきではない「冬」に種から植物を育てる方法を深掘りしました。
低温や日照不足といった悪条件が重なる冬ですが、「人工的に育つ環境をつくる」ことで、実生を楽しむことが可能です。

特に重要なポイントは、発芽に適した温度(水温)を保つ『温度管理』と、乾燥させないための『水やり管理』の2点。
園芸用ヒートマットや植物育成LEDライトなどのアイテムを活用すれば、より冬の実生を成功させやすくなります。

オンラインショップへのリンクバナー

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です