観葉植物を播種(種まき)から始めて育てるには、種の特徴を理解したうえで適切な処理や管理を行うことが大切です。
特に硬い種の場合、普通に播種しただけでは発芽しにくいため、特別な処理が必要になることが多いです。
この記事では、硬い種の観葉植物を健康に育てるために重要な「処理方法」や「播種の手順」をご紹介します。
硬い種の播種には特別な処理が必要
観葉植物の硬い種とは、厳しい環境条件で生き残って発芽するために種皮が非常に硬くなった種のことです。
以下の5種類が人気ランキング上位常連の代表的な硬い種の植物です。
- おしゃれで人気の高い【モンステラ】
- 「永遠の幸せ」という花言葉の【ゴムの木(フィカス)】
- 縁起が良く金運を呼ぶとされる【パキラ】
- 「幸福の木」と呼ばれる【ドラセナ】
- 塊根植物の王様と呼ばれる【オペルクリカリア】
これらを含む硬い種は、種子の保護・休眠状態の維持・水分の調節・長期保存・火災への適応などの理由により、硬い種へと進化してきました。
そんな特性を持っているからこそ、逆に環境が安定した状況下では自然に発芽しにくいということです。
そのため、発芽率を大幅に向上させるために特別な処理が必要になります。
硬い種の播種準備
硬い種の播種では、特別な処理をする前にまず行うべき準備があります。
それは、より良い種を選定することと、播種に最適な時期に合わせて準備することです。
種の選定
種を選ぶ際には、外観・硬さ・乾燥状態・重さ・発芽テストなどの点から、良い種と悪い種をしっかり見極めて選定します。
良い種の5つの特徴
- 種の表面がなめらかで傷や凹みがなく色も自然な色
- 異常に硬すぎることなく適度な硬さ
- 乾燥しすぎて割れたり崩れたりしていない
- 同じ大きさの種の中でも手に取ると重みを感じる種
- 水に浸けて沈む種(発芽率が高いことが多い)
悪い種の特徴は、良い種の特徴の真逆となります。病気や害虫の痕跡・変色や斑点があったり、中が空洞あるいは腐敗しているために柔らかく軽いものもあります。
湿った種もカビや腐敗のリスクが高いため、選ばないようにしましょう。
播種に最適な時期
播種に最適な時期は、一般的には春が最も適していると言われています。
初夏にかけて気温が上昇し始め日照時間も長くなっていくため、種の発芽に必要な温度と光が確保しやすいからです。
そのため、初心者や手軽に育てたい方は、春に播種することをおすすめします。
とはいえ、春以外の播種でも手間をかけ適切な管理と環境調整を行うことができれば、硬い種を発芽させしっかり成長させることも可能です。
<春以外に播種する場合の注意ポイント>
秋:秋が深まり気温が下がり始めたらしっかりと温度管理する
夏:土壌の乾燥と病害虫対策をしっかり行う
冬:室内管理を徹底し低温と光量不足にならないようにする
硬い種の処理方法
硬い種を発芽させるための特別な処理には、スカリフィケーションという「傷つけ処理」「酸処理」「熱湯浸漬法」の3種類の方法や、「冷凍解凍処理」「水浸し処理」などの方法があります。
それぞれ適用可能な種子の種類や条件があるため、播種する種に合った処理方法を選ぶことが成功の秘訣です。
スカリフィケーション(傷つけ処理)
スカリフィケーションの傷つけ処理は、手工具などを用いて手動で種子の外殻を破壊する方法です。
これらの処理方法は、小規模な種子処理に適しています。
手軽に行えることや発芽率や発芽速度が向上するというメリットがある反面、手間がかかりリスクも伴うというデメリットもあります。
酸処理
酸処理はスカリフィケーションの方法の一つで、硬い種皮を化学的に溶かして発芽を促進する方法です。
一般的には硫酸を使用するため、特に安全面に注意して慎重に行う必要があります。
酸処理で硫酸に浸ける時間は一般的に1分〜10分程度ですが、品種によって異なります。
長時間浸すと種が完全に溶けてしまうことがあるため、時間の管理は徹底しましょう。
酸は非常に危険な薬品ですから、取り扱いに不慣れな方は別の方法を検討した方が安全です。
熱湯浸漬法
熱湯浸漬法はスカリフィケーションのひとつで、種子を短時間沸騰したお湯に浸けて種皮を柔らかくし、その後急速に冷水に移す方法です。
品種によって違いますが、浸漬時間は1〜3分程度が一般的です。この時間が長すぎると、種が煮えたりダメージを受けてしまいます。
逆にお湯の温度が低すぎたり浸漬時間が短すぎれば、効果が不十分になるので注意しましょう。
冷凍解凍処理
冷凍解凍処理は、スカリフィケーションの一つです。
種子を冷凍してから解凍することで種皮に微細なひび割れを生じさせ、水分や酸素の浸透を容易にする方法です。
自然環境での寒さによる凍結と解凍の過程を模倣した方法なので、温帯地方や寒冷地域の植物に適しています。
デリケートな種や水分含有量が高い種には不向きなので注意しましょう。
水浸し処理
硬い種の外殻は、硬いがゆえに必要な水分の吸収を妨げることがあります。
水浸し処理は、水に浸けることで種子の外殻を柔らかくし、水分を内部に浸透しやすくする方法です。
浸漬時間は品種によって違い、一般的には12時間から24時間ほど浸します。
長時間浸漬する場合は、定期的に水を交換して清潔に保ち、酸素不足やカビの発生を防ぐようにします。
熱に弱い種でなければ、効果アップのために温水(40〜60℃)を使用することも可能です。
硬い種の播種方法
硬い種の播種する方法では、種ごとの特性や育てる環境に合わせて最適な土壌を用意し、適切な間隔と深さに蒔くことが重要ポイントです。
土の準備
観葉植物の播種でしっかり検討して用意したいのが「土」です。
硬い種に最適な土を選ぶ際には、以下の要素を考慮して用意しましょう。
・水はけの良い土
・栄養豊富な土
・通気性の良い土
・適度な保湿性のある土
観葉植物を室内に置きたい場合は、虫が発生しない土を選ぶのも選択肢のひとつです。
熱処理・殺菌消毒を済ませた土や、腐葉土・有機質の肥料ではなく化成肥料入りの土を選ぶといいでしょう。
種を蒔く
種蒔きは、まず水はけの良いポットやトレイを用意し、種同士が発芽の成長を妨げないように適度な間隔を保つよう、均等に分布させて蒔いていきます。
種を蒔く際の適切な深さは種の大きさによって異なり、一般的には種の直径の2〜3倍の深さが良いとされています。そして、小さな種は薄く覆土し、大きな種はしっかりと覆土します。
具体例を挙げると、小さな種のサボテンは深さ1〜2mm(土の表面近く)に蒔いて軽く覆土します。
大きな種のパキラやモンステラは、種の直径の2〜3倍の深さに蒔き、しっかりとした覆土が必要です。
種蒔き後の管理
種蒔きが完了したら、順調に発芽・成長するように湿度(水やり)や温度と光の管理をしっかり行っていきます。
<湿度(水やり)管理>
播種直後は、まず霧吹きで土表面を湿らせます。
その後は、土が乾かないように様子を見つつ適度に水を与え、発芽するまでは、ラップ・透明なプラスチックカバーなどで覆うなど工夫をして、湿度を保つようにしてください。
<温度管理>
発芽するためには一定の温度が必要で、一般的には、20〜25℃程度が適温と言われています。
温度が低いと発芽が遅れるため、室内の温度が低い場合は、暖かい場所に置いたりヒートマットなどを使用することも検討するといいでしょう。
<光の管理>
発芽するまでは、明るい場所に置いて直射日光は避けるようにしつつ、徐々に直射日光に慣らしていきます。
発芽後は、柔らかい日差しが当たる場所に移動させ、過度な直射日光は避けるようにしましょう。
硬い種が発芽したあとは
硬い種が発芽したら、間引き・移植・肥料の追加が必要となってきます。
これらを適切に行うことで、観葉植物の苗は健康に成長し、美しい観葉植物に育つことが期待できます
硬い種が発芽までにかかる時間
発芽までにかかる時間は、品種によって様々です。数日から1週間程度で芽が出るものもあれば、1ヶ月以上かかる植物もあります。
具体例を挙げると、フィカスの種は1〜2週間程度で発芽することが多く、モンステラやサンスベリアの種は通常2〜4週間程度で発芽します。
ケンチャヤシ・バオバブなどは発芽まで1ヶ月以上かかることが多いです。
観葉植物の種を播いた後は、適切な環境維持と管理を続けながら、焦らずに待つようにしましょう。
間引きと移植
複数の種を蒔いた場合、密集しすぎている部分は間引きましょう。
間引きを行うことで残った植物が成長スペースを確保できるようになり、水・空気・光・栄養をしっかり受けて健全に成長してくれます。
<間引きのタイミング>
間引きのタイミングは、最初の2枚の葉の後に出てくる本葉が2〜3枚出てきた頃が最適です。
弱い苗・成長が遅れている苗から優先して取り除き、適切な間隔を保ちます。
移植も成長させる過程で必要なことです。現在の場所から新しい場所へ移植することにより、根詰まりの解消・新鮮な土壌に更新・成長するためのスペース確保・排水性の改善などが行えます。
<移植のタイミング>
移植のタイミングは、本葉が数枚出て苗がしっかりとした根を持つようになった頃が最適です。
一般的には発芽から1〜2ヶ月後が目安だと言われています。
移植する際の注意ポイントは、現在の苗に対して少し大きめの鉢を選ぶことと、根を傷つけないように丁寧に取り扱うことです。
また、移植直後の苗はストレスを受けやすいため、直射日光を避けて徐々に通常の場所に移動させるといいでしょう。
肥料の追加
苗の成長を促進するためには、適切な肥料を与える必要があります。
発芽してから2〜3週間後あたりから、肥料を与え始めます。市販の観葉植物用液体肥料などを、デリケートな苗に合わせて水で薄めて使用しますが、規定濃度の半分程度に薄めるとよいでしょう。
成長期にかけて1〜2週間に1回程度を目安に与え、過剰に与えすぎないように注意します。
土が乾いている状態で肥料を与えると、根が肥料の影響を受けやすくなるため、土が適度に湿っていることを確認してから与えます。
移植した場合には、移植後1〜2週間後から薄めの液体肥料を与えると、苗の成長が促進されます。
硬い種が発芽しない原因
硬い種が発芽しない場合、適切な手順や環境・管理状況だったのか見直す必要があります。
また、種の種類によって必要な条件が異なるため、播種する種の情報を再確認することも大切です。
種の品質が悪い
古い種は発芽率が低下します。また、種が不良種や不健康な場合は、発芽率の低下どころか発芽すらしません。
涼しく乾燥した場所で保管されている新鮮な種子が理想的です。
種を用意する際には、信頼できる専門店や評判の高いオンラインストア・実際に保管状況を確認できる店舗などで購入することをおすすめします。
環境条件が適していない
温度・湿度・土壌・日光などの環境条件が、種に適していない・正しく管理されていないという場合には、発芽率はぐっと低下します。
よくある発芽しない原因
- 種が過剰に湿っていて腐敗している
- 土が乾燥しすぎて発芽に必要な水分が不足している
- 温度が低すぎる・高すぎる
- 光不足あるいは光が強すぎる
温度・湿度・日光などの環境条件は、それぞれ最適な量や範囲があって、不足していても多すぎても土壌の質や発芽率が下がってしまいます。
播種する種の発芽条件を再度確認して、管理方法を見直すとよいでしょう。
播種の深さが適していない
種を蒔く時の深さが適切でない場合も発芽しません。
一般的には、種の大きさの2〜3倍の深さに播くのが適切だと言われており、種を土に蒔いた後に軽く押さえて土と接触させることで、発芽が促進されます。
種を蒔いたあとの覆土も深さに合わせて量を調節します。覆土が厚すぎると発芽しにくくなり、薄すぎると乾燥しやすくなります。
まとめ
観葉植物を播種して育てるためには様々な手順や管理方法があり、特に硬い種の植物の場合は発芽させるための特別な処理も必要となってきます。
品種によって必須条件が違うことから難しいことも多く、発芽しないなどの失敗もあるでしょう。
ぜひこの記事で基礎知識を得て、発芽に成功するようチャレンジしてみてください。