植物への水やり方法のひとつに腰水がありますが、やめるタイミングが難しいと感じる方も少なくありません。
腰水をやめるタイミングを間違えると植物が傷む恐れがあるため、十分注意が必要です。
この記事では、腰水をやめるタイミングや必要な道具、やめた後の管理などを解説しているため参考にしてください。
腰水とは?
腰水とは植物への水やり方法のひとつで、鉢植えやプランターの底に水受け容器を置いて水を張り、鉢底から水分を吸わせます。
ただし、長期間腰水を続けると、土が不衛生になったり虫が発生したりする恐れがあるため注意しましょう。
3か月以上の腰水には、植物の茎や枝が長く伸びて細くなってしまう「徒長」のリスクもあります。
腰水を行うシーンは、旅行や出張などで何日か家を空けるときや暑くて植物が傷みやすい時期、実生のときや発芽してすぐの植物を管理するときなどです。
ある程度長い期間腰水を行う際は、水が悪くなることを防ぐためにも、こまめに水を入れ替えましょう。
腰水をやめるタイミング
発芽したばかりの植物に腰水をしている場合、次のタイミングでやめることがおすすめです。
それぞれ、詳しく解説します。
根鉢がしっかりできている
植物の根鉢がしっかりできている場合は、腰水をやめても問題ありません。
根鉢とは、植物を鉢植えから抜いた際に、根と土が集まっている部分のことです。
根鉢の見極めが難しい場合は、太くしっかりとした根が張っているかどうかを判断基準にしましょう。
発芽したばかりの植物に腰水を行う理由は、発芽直後は根が短く、通常の水やりだと流れてしまうからです。
根がしっかりと張った状態になった場合は、流れてしまう心配もないため、通常の水やりに切り替えて問題ありません。
葉の状態がいい
葉の状態が良い場合や、植物の本葉が3枚ほど出てきた場合は、腰水をやめても問題ありません。
葉の状態が良いということは、植物がきちんと水分を吸収できており、健康な状態である証だからです。
植物が健康に育っている場合、水やりを過剰に行うと根腐れや徒長を起こす危険性があります。
腰水を長期間続けていると水分過多になりやすいため、通常の水やりに切り替えましょう。
腰水をやめる際に必要な道具
実生のために行っていた腰水をやめ、苗の鉢替えを行う際に必要な道具は、次のとおりです。
- 新しい鉢
- 鉢底ネット
- 鉢底石
- 細粒の培養土
- 土入れ
鉢替えを行う方法は簡単で、現在使用している鉢よりも少し大きいサイズの鉢を用意し、鉢底ネット・鉢底石・培養土の順に入れます。
鉢底ネットと鉢底石を鉢に敷く理由は、排水性を高めて水やりによる根腐れを防止するためです。
鉢の準備ができたら土に穴をあけ、植え替えたい苗をやさしく引き抜いて新しい鉢の中に入れましょう。
あとは、土入れを使用して培養土を根に被せるだけです。
腰水のやめ方
苗の鉢替えが完了したら、次の手順で腰水をやめましょう。
- 鉢底から抜けるくらい水やりをする
- 根が定着するまでは半日陰で育てる
- 様子を見ながら水やりを調整する
それぞれ、詳しく解説します。
1.鉢底から抜けるくらい水やりをする
苗の鉢替えが完了したらすぐに、鉢底から抜けるくらい水やりを行いましょう。
鉢替え直後に水やりを行うことで、土と根がきちんと定着しやすくなります。
土の粉塵を流せる点も、鉢替え直後に水やりを行うメリットです。
粉塵は根腐れの原因になる上に、鉢底に溜まって排水に悪影響を及ぼす危険性があります。
鉢替えした苗を良い状態で育てるためにも、鉢替え後の水やりは忘れずに行いましょう。
鉢底から透明な水が出るようになったら、水やりを終了して問題ありません。
2.根が定着するまでは半日陰で育てる
苗の鉢替え後は、根が土に定着するまで半日陰で育てましょう。
鉢替え直後は土に根が張っていない状態のため、直射日光に当てすぎるとしおれる危険性があります。
根が定着するまでの目安は1〜2週間ほどですが、葉に張りが出てきたら元々管理していた場所に戻して問題ありません。
苗の葉に張りが出てきて元々管理していた場所に戻せたら、水やりを再開します。
水やりは土が乾いてから行い、鉢受けに溜まった水は必ず毎回捨てましょう。
3.様子を見ながら水やりを調整する
鉢替えした苗の腰水をやめる際は、苗の様子を見ながら水やりを調整しましょう。
過度な水やりはよくありませんが、土が乾燥しすぎていると水切れや生長不良を起こす恐れがあります。
適切な水やりがわからない場合は、土壌水分計で土の中の水分量を確認し、乾燥したタイミングで水やりを行いましょう。
土壌水分計はさしっぱなしでも問題ありませんが、機器がさびるリスクを考慮すると測定時だけの使用がおすすめです。
腰水をやめた後の管理
鉢替えが完了して腰水をやめた後は、次の方法で苗を管理しましょう。
- 土や葉の状態をチェックする
- 肥料を与える
- 植物の種類によって調整する
それぞれ、詳しく解説します。
土や葉の状態をチェックする
腰水をやめた後は、土や葉の状態をこまめにチェックしましょう。
植物にとって鉢替えはストレスの原因になるため、土や葉の状態を入念に確認し、適切な管理を行う必要があります。
土の状態をチェックする際は、湿り具合を確認しましょう。
鉢替え後は土が乾燥しやすい傾向にありますが、過度の水やりは根腐れの原因になるため、十分注意してください。
葉の状態を確認する際は、しおれたり変色したりしていないか確認しましょう。
しおれたり変色したりしている場合、植物がストレスを受けている可能性があります。
まずは、現在の水やりが適切かどうか見直しましょう。
水やりが適切な場合は光量・温度・湿度が適切か見直し、問題ないようであれば必要に応じて植物に肥料を与えて、植物が復活するか様子を見てください。
肥料を与える
鉢替えが完了して通常通り管理できるようになったら、様子を見て肥料を与えましょう。
ただし、鉢替え直後に肥料を与えると枯れる恐れがあるため、根が土に定着するまでは控えてください。
肥料を与え始めるタイミングは植物の状態により異なりますが、鉢替え後は最低でも2週間は肥料を与えない方が良いケースが一般的です。
植物によっては肥料をあまり必要としないものもあるため、事前に確認の上で適切な量を与えましょう。
鉢替え後の苗または若い植物に肥料を与える際は、濃度の低いものがおすすめです。
濃度が高すぎると苗を傷つける恐れがあるため、水溶性の肥料を薄めて与えるか、有機質の肥料を与えましょう。
植物の種類によって調整する
鉢替え後の管理では、植物の種類によって水やりを調整しましょう。
乾燥に強い植物であれば、水やりの頻度を少なめにしても問題ありません。
一方、多湿を好む植物の場合は、水やりの頻度をやや多めにした方が良い場合もあります。
成長期が雨期の植物に関しては、苗が若いうちは水を多めに与えてください。
最適な状態で苗を育てるためにも、植物ごとの適切な水やりの頻度や量、日当たりなどを事前に調べておきましょう。
腰水を卒業する際の注意点
鉢替えを行った後に腰水を卒業する際は、次の点に注意しましょう。
それぞれ、詳しく解説します。
急激な変化は避ける
腰水を卒業する際は、植物に急激な変化を与えないように注意しましょう。
植物の実生で腰水を行っていた場合、発芽直後に水切れを起こすとすぐに枯れてしまいます。
発芽してすぐに腰水をやめるのではなく、葉が3枚ほど出るまでは腰水を続けましょう。
苗が幼く、まだ根が張っていない場合も、根がある程度伸びるまでは腰水を続けた方が良いケースが一般的です。
鉢の植え替え後は、水やりの際に1cmほどの水を鉢受けに溜め、土が乾燥するまでの期間をやや長めにしましょう。
腰水ではないもののやや水を多めに管理することで、植物に急激な変化を与えずに済みます。
ただし、常に土が濡れている状態だと根腐れを起こす恐れがあるため、水の管理は慎重に行いましょう。
室内の環境に合わせる
腰水を卒業する際は、室内の環境に合わせましょう。
室内の温度や湿度により、最適な水やりの頻度や量は異なるからです。
暑い時期は空気中の湿度が低下して乾燥するため、植物が傷みやすくなってしまいます。
湿度が低下しているときは、腰水を行うことで空気中の湿度が上がり、水切れや植物の傷みを防ぐことが可能です。
ただし、常に腰水で育てると土が加湿気味になり根腐れの原因になるため、注意してください。
腰水を卒業できない原因
いつまで経っても腰水を卒業できない場合、次の原因が考えられます。
- 弱光環境で育てている
- 大型の植物
- 腰水が向かない種類の観葉植物
それぞれ、詳しく解説します。
弱光環境で育てている
植物を弱光環境で育てている場合、光合成が不十分なために腰水を卒業できない場合があります。
光合成が不十分だと植物が水を吸収する量が減り、生長も遅くなるからです。
生長が遅くなると根や葉がなかなか育たないため、腰水を卒業できません。
ただし、発芽したての芽は直射日光に弱いため、置き場所には十分注意してください。
注意点として、植物により最適な日当たりや温度は異なります。
事前に最適な日当たりや温度を調べた上で、適切な場所で腰水を行いましょう。
室内で植物を育てている場合は、植物用LEDライトを使用することで生長が早くなる場合もあります。
ただし、LEDライトでの実生には徒長のリスクもあるため、十分注意してください。
大型の植物
大型の植物は、なかなか腰水を卒業できず、気づけば根腐れしている場合があります。
大型の植物に使用する鉢は幅も深さもあり、土の表面は乾いていても中が湿っているケースが多いからです。
乾燥に強い大型植物は、腰水のやりすぎによる根腐れのリスクが高いため、とくに注意しましょう。
大型の植物は、一度水やりをすると3週間から1か月ほどもつといわれています。
腰水をする場合は、高頻度で行わないように注意してください。
腰水が向かない種類の観葉植物
そもそも腰水が向かない種類の観葉植物の場合は、なかなか腰水を卒業できないと感じることがあります。
腰水が向かない種類の植物に対し、腰水で水を与えすぎると、根が傷んで水分や栄養分をうまく吸収できないからです。
水分や栄養分をうまく吸収できないと生長も滞り、いずれは枯れてしまう恐れがあるため、十分注意してください。
乾燥を好む植物に関しては、無理に腰水を行う必要はありません。
休眠期は水やりを一切しない方が良い植物もあるため、事前に調べておきましょう。
まとめ
発芽してすぐの植物に腰水を行っている場合、やめるタイミングは、根鉢がしっかりとできており葉の状態が良いときです。
腰水をやめる際は、新しい鉢・鉢底ネット・鉢底石・細粒の培養土・土入れを用意し、鉢替えを行いましょう。
鉢替えが完了したらすぐ水やりを行い、あとは根が定着するまで半日陰で育てます。
根が定着したら、様子を見つつ通常の水やりを行えば問題ありません。
ただし、植物により最適な水の量や管理環境が異なる場合もあるため、必ず事前に確認しましょう。