実生を始めた頃は、肥料なんてあまり考えませんでした。
まず発芽してほしい。腐らずに根が出てほしい。それだけです。
ところが本葉が増えて鉢上げも済むと、「もう少し育てたい」「根をしっかり作りたい」と欲が出てきます。
そこで肥料です。
でも園芸コーナーには、マグァンプ、IB化成、メネデール、リキダス、HB-101……。
全部似たようなものに見えて、実は役割が違います。
私は室内管理なので、においや虫、管理のしやすさを考えて、主に化成肥料と活力剤を使っています。
今回はその使い分けを整理します。
肥料と活力剤は、そもそも何が違う?
肥料は植物を作る材料。活力剤は、その材料を使うことや生育環境への対応を補助するもの。
ざっくり言えば、この違いです。
マグァンプKやIB系肥料、液体肥料は、窒素・リン酸・カリウムなどの栄養を補います。
一方、メネデール、リキダス、HB-101は肥料の代わりにはなりません。
活力剤だけで育てようとするのは、人間でいえばサプリメントだけ飲んで「ちゃんと食事しているのに」と言っているようなものです。
いや、食事してないんです。
植物に必要なのはN・P・Kだけじゃない
肥料三要素は窒素(N)、リン酸(P)、カリウム(K)。
葉の成長やエネルギー代謝、水分調節などに欠かせません。
ほかにもマグネシウム、カルシウム、鉄などが必要です。
とくに鉄は、クロロフィルそのものの中心元素ではありませんが、その形成や光合成に関わります。
土に鉄があっても、pHなどの条件によっては吸収しにくくなることがあります。
播種前のメネデールは「発芽剤」ではない

SeedStockで買った種を播く前、水に浸す種類なら、私はメネデールを加えることがあります。
メネデールはイオン状態の鉄を含む植物活力素。
メーカーは、浸漬が推奨される種について100倍液を使う方法を案内しています。
では、浸ければ発芽率が上がるのか?
ここは断定しません。
パキポディウムやアデニウムなど、種ごとに発芽率の上昇を裏づける比較データが十分あるわけではないからです。
私にとっては、発芽剤ではなく播種初期の補助。
種は最初、内部に蓄えた栄養で動きます。発芽前から濃い肥料を入れてスタートダッシュさせる必要はありません。
発芽直後の肥料は、少なめが安心
発芽直後は根が小さく、肥料の濃度が高いと水を吸いにくくなったり、根を傷めたりします。
いわゆる肥料焼けです。
まず根が出る。芽が出る。光合成が始まる。それから栄養を少しずつ増やす。
私はこの順番を大切にしています。
元肥にはマグァンプK

室内実生で使いやすいのが、窒素・リン酸・カリ・マグネシウムを含む緩効性肥料のマグァンプK。
一度にすべてが溶け出すのではなく、徐々に効くのが特徴です。
ただし「ゆっくり効く=絶対に肥料焼けしない」ではありません。
小さな鉢ほど土量が少ないので、規定量を超えて攻めないようにしています。
小粒は肥効が約2か月で育苗や追肥向き。中粒・大粒はより長く効く設計です。
生育が安定してから少量使うのが基本。
実生で探したいのは最大量ではなく、成長を止めない最低限です。
育ってきたらIB系肥料で追肥
元肥だけで足りなくなったら追肥を考えます。
私が使いやすいのはIB系の粒状肥料。IBDUという緩効性窒素成分が少しずつ効きます。
粒なら鉢の大きさや成長具合に合わせて管理しやすい。
液肥のように毎回希釈する手間もありません。
「今日、液肥の日だったっけ?」となる私には大事なポイントです。
ただし、追肥の前に新葉や根が動いているかを確認します。
パキポディウムやアデニウムなど、生育期と休眠期がはっきりした植物に、季節を無視して肥料を足しても逆効果になりかねません。
メネデール・リキダス・HB-101の使い分け

播種前の浸漬や植え替え、発根を促したい場面などで使っています。
肥料代わりに常用するものではありません。

コリン、フルボ酸、アミノ酸、カルシウムや微量元素などを含む活力液。
私は成長中の補助役として考えています。
基礎の栄養はマグァンプなどの肥料で確保し、必要に応じて使うイメージです。
植物由来の抽出物を使った活力液です。
必須ではなく、試してみる選択肢。
たとえば同じロットの10株を5株ずつ使用・無処理に分け、半年後に比べる。
そういう実験も実生の楽しさだと思います。
ビカクシダの胞子培養はどうする?
胞子から前葉体、幼胞子体へ育つビカクシダも、初期から大量の肥料は必要ありません。
本葉が展開し、根が育ってからごく薄い施肥を考えます。
板付けの水苔にマグァンプを使う場合も、全体に大量に混ぜ込むのは避けたいところ。
水苔栽培では置肥を基本とする製品資料もあります。
私は成長点や根の中心に粒を固めず、外周の根域付近へ少量置く方法を考えます。
合わなければ取り除けるのも利点です。
実生の肥料は3段階で考える
私は実生の肥料管理を、大きく3段階に分けています。
① 播種前〜発芽期
まず発芽。肥料は控え、必要ならメネデールなどを補助的に使う。
② 本葉が動き始めたら
緩効性肥料を少量、またはごく薄い液肥を検討する。
③ 株が安定したら
元肥にマグァンプ、生育期の追肥にIB系。必要に応じて活力剤を使う。
最初から全部投入する必要はありません。
肥料を増やす前に、植物が使える環境を
肥料の記事なのに、最後はこんな話になります。
結局、肥料だけ増やしても植物は育ちません。
光、温度、水、風、根の状態。
まずそこを見る。
室内の小鉢では、においや虫、カビなどの心配を減らし、少量ずつ調整できる管理が私には合っています。
もちろん植物ごとに正解は違います。
少し使う。見る。増やす。また見る。
実生は、発芽からずっと実験です。
肥料も同じ。
たくさん入れた人が勝ちではなく、その植物が使えるだけ入れた人が勝ち。
活力剤には、その横で少し手伝ってもらう。
そんな距離感が、長く付き合いやすい気がしています。







