
冬に多肉植物の種をまく、なんだか難しそう…
と感じている方もいるでしょう。
たしかに多くの多肉植物は暖かい環境を好むため、冬は園芸のハイシーズンとは言えません。
ただし多肉植物には、寒い(すずしい)季節によく成長する「冬型品種」というグループが存在します。
冬型品種と言っても、氷点下の温度でもグングン成長するわけではないため、寒さが本格的になる前に種をまくのが望ましいですが、品種を選べば十分「冬の実生(みしょう)」を楽しむことは可能です。
本記事では、冬でも種まきから楽しめる多肉植物の人気品種9選をご紹介します。
環境を整えれば一年中種まきできる
「種まきは春に行うもの」と思われがちですが、植物ごとに種まきに望ましい季節は異なります。
冬型の品種にとっては、寒さよりも蒸し暑さの方が苦手なため、春よりも暑さが落ち着いた秋に種をまくことで、その後の元気な生育につなげやすいものです。
そんな冬型品種ですが、室内や温室内で種まきに望ましい環境を整えることができれば、冬でも種まきを楽しめます。
多肉植物を育てていると、冬の園芸の楽しみ方は限られてくるもの…。
冬に種まきを楽しめると、冬に行う園芸作業が増え、植物の楽しみ方の幅が広がるでしょう。
冬に種をまく際の注意点
植物が発芽するためには、温度管理が欠かせません。
本格的な寒さが到来しているタイミングで種をまく場合、寒さ対策は必須です。
また、成熟した多肉植物は乾燥気味に育てるのが基本ですが、種まき直後の植物が水分不足に陥ると調子を崩すリスクが高まります。
冬の種まきにおける注意点は、以下の記事でご紹介しているため、ご興味があればチェックしてみてください。
寒い季節でも種まきを楽しめる冬型品種
冬型の多肉植物は寒さに強いものの、高温多湿は苦手なため、夏にすずしい置き場所を確保できるなら、避難させた方が無難です。
アフリカ亀甲竜(ディオスコレアエレファンティペス:Dioscorea elephantipes)
亀甲竜は冬型の塊根植物で、秋から春にかけてつる性の枝葉をグングン伸ばし、暑さを感じると休眠状態に入ります。
本来の種のまきどきは秋ですが、冬からでも遅くはありません。
発芽後しばらく経過すると成長速度が早まり、育成環境との相性がよければ、どんどん塊根部を肥大させます。
これまで塊根植物を育てたことがない方や、冬型の植物に苦手意識を持たれている方にも、おすすめできる品種です。
亀甲竜は光を当てると発芽しない「嫌光性」の種子とされているので、浅く覆土するか、暗い場所で管理することで発芽を促せるでしょう。
個人的に冬の種まきに最もおすすめしたい品種のため、一番目にご紹介しました!
(発芽温度:15~20℃)
リトープス(Lithops)
メセン類のリトープスは、冬型に分類される多肉植物。
種まきについては秋が適期ですが、発芽率が比較的高いグループで、条件さえ合致すれば冬以降でも十分楽しめる品種です。
リトープスはかわいらしい花を咲かせる品種が多く、コンパクトにまとまり、育成スペースを取らない点も長所と言える品種です。
ただし成長速度は遅いため、見ごたえのある株に成長するまでに、少なくとも1~2年ほどの時間を必要とします。
じっくりと実生を楽しみたい場合には、ぜひリトープスを検討してみてください!
(発芽温度:15℃~25℃程度)
コノフィツム(Conophytum)

リトープスとよく似た姿をしたコノフィツムも、冬型のメセン類に分類される多肉植物です。
自宅で育てているコノフィツムは、最低気温がひと桁に差しかかっても開花していることがあるため、自然界では寒い環境下でも周囲に種を飛ばして発芽しているのかもしれません。
リトープスもコノフィツムも種のサイズが小さく、用土の奥底に種が流れていってしまうことがあるため、種をまく際は以下のような対応をしてください。
- 種をまく前に、用土を濡らしておく
- 鉢ごと容器に浸ける「腰水(こしみず)」で水やりをする
(発芽温度:15℃~25℃程度)
オトンナ(Othonna)

オトンナは、南アフリカ原産の塊根植物。
100品種以上が存在するオトンナ属の植物は、それぞれが多種多様な姿をし、黄色くて小さな花を咲かせます。
特に以下のような品種に人気が集まっています。
- オトンナ・ユーフォルビオイデス (Othonna euphorbioides)
- オトンナ・ヘレー (Othonna herrei)
- オトンナ・クラビフォリア (Othonna clavifolia)
いずれの品種も冬型に分類されるため、冬でも種をまきやすいです。
暑い季節に休眠し水を必要としなくなるため、風通しのよい場所で断水気味に管理し、根腐れ予防に努めましょう。
(発芽温度:10~15℃)
チレコドン(Tylecodon)

チレコドンは木質化が進んだゴツゴツした幹と、淡いグリーンの葉色が特徴的な塊根植物です。
自生地から輸入した現地株(げんちかぶ)も魅力的ですが、種からでも迫力ある姿に育てやすく、育てがいのある品種です。
成長速度は遅いため、盆栽感覚で楽しみましょう。
(発芽温度:10~20℃)
冬型以外で、冬に種まきを楽しみやすい品種
ブーファン・ディスティカ(Boophone disticha)
ブーファン・ディスティカは、大きな球状の塊根部から波打つ細長い葉を左右に展開する、他に類を見ない多肉植物です。
塊根植物の中でも希少性が高く、種や株が流通する機会は少ないため、入手できたらラッキーな品種です。
かわいらしい見た目とは裏腹に、全体に毒(アルカロイド)を持っており、かつては毒矢にも利用されたことがあるほど。
ブーファン・ディスティカを楽しむ上では、取り扱いには気を付けましょう…!
ブーファン・ディスティカの生育型は諸説あり、夏型品種として出回ることが多いですが、耐寒性が高いため冬でも育てやすいです。
(発芽温度:10~20℃)
ケラリア・ピグマエア(Ceraria pygmaea)
ケラリア・ピグマエアは、冬型品種と言われることもありますが、一般的には暖かい季節を好む春秋型として分類されることが多い塊根植物。
成熟してもコンパクトにまとまりますが、ゴツゴツした幹から多肉質な葉を展開させる姿は見る者を圧倒します。
マイペースな成長を見せるものの、秋から春まで長い間楽しめるのが本種の魅力です。
またデリケートな見た目とは裏腹に、その性質は強く、特にある程度の大きさまで成長した株は育てやすい印象を受けます。
(発芽温度:20~25℃)
エケベリア(Echeveria)

エケベリアは春秋型のため、冬型品種に比べると冬に種から育てる難易度は高め。
ただし多肉植物の中では寒さに強い方なので、いちど発芽させてしまえば、育てやすい品種になります。
品種ごとに葉色のバリエーションも豊かで、コレクションのし甲斐がある点や、葉っぱ一枚から新しい個体を増やせる葉挿しの成功率が高い点も、エケベリアが親しまれる理由です。
(発芽温度:20~25℃)
ハオルチア(Haworthia)
ハオルチアは、エケベリアと同じく春秋型ですが、エケベリアよりすずしい季節を好むのが特徴的。
発芽までに時間がかかり、成長速度も早くないため、時間をかけて徐々に大きく育てたい場合におすすめです。
群生したハオルチアを株分けすれば、お気に入りの株を増やすこともできるでしょう。
(発芽温度:20~25℃)
まとめ
冬に多肉植物の種まきを成功させるためには、「品種選び」と「環境整備」が鍵になります。
冬型品種や耐寒性の高い植物であれば、冬の時期でも成長を楽しみやすくなります。
特に亀甲竜やリトープス、コノフィツムなどは、冬の実生の醍醐味を味わわせてくれる品種です。
ぜひ、寒い季節でも楽しめる、ユニークな多肉植物・塊根植物の「実生」の世界に足を踏み入れてみてください!
